残雪の山をバックに「トワイライトエクスプレス」
一週間以上に及ぶ道東・知床の旅から帰ったばかり。
今回は羅臼岳のクマ事故が撮影にどのように影響を及ぼしているかという点に関心があったが、やはり少なからず制約が出て、以前とは少しばかり勝手が違った。細かく書いても無駄だし、ここに指摘しても知床財団や環境省の現地関係者は、人の話を真摯に聴く耳もなく意味がないから省略するが、どうも彼らは「守る」という観点だけにとらわれて、「今後どうする」という発想がなく、観光地・知床の魅力がこのままでは大きく削がれてしまうように感じた。たしかになかなか見られない流氷などは「売り」の一つだが、日本全国には多くの景勝地があって、それらの中には知床をはるかに上回る景色もあるのだから、このままでは動物撮影者ばかりではなくリピーターの観光客も減るように思う。知床と言えばヒグマに出会えるかという期待も大きいし事実、お土産のTシャツなどにもクマのイラストがあるくらいなのに観光客がクマを見つけて車を止めることさえ咎められるのなら知床観光の拠点はオホーツク海側のウトロからワシやシャチ、イルカなどの観光船に乗れる(ウトロ側では動物観察の船はほぼない)根室海峡側の羅臼に譲ることになりそうだ。
さて、撮影は上々の上といった成果を得た。日本に200羽以下といわれる絶滅危惧種であるシマフクロウの良い絵が撮れた。もちろん餌付けされていない野生の個体。自画自賛は面映ゆいものの、客観的に見ても最高ランクの写真と言って良いだろう。だからヒグマなどどうでも良くなって、知床財団や環境省のアホな連中と下手に軋轢を生まずに旅を終えることができた。撮影後10日たってもその喜びは未だ持続しており、疲れが癒えるまで画像処理をせずに体調がととのってから作業を始めようと思っている。
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書店で立ち読みする鉄道雑誌のほとんどが車両の歴史やガイド、あるいは運用などにまつわる毎度おなじみの記事ばかり。昔から大して変わらない内容で、もう鉄道撮影には熱中することのない身には退屈そのもの。極論すればほかの本や資料から引用(悪く言えばコピペ)したと思われる解説的なものが多く、しょせん撮影するつもりもない車両を取り上げても興味も湧かない。
もちろん現役のファンの中には、そういう知識を蓄えて撮影に役立てる方もいるのだろうが撮影の肥やしになるような知識って、こんな記事の中にそれほどあるものではない。おまけに若いファンは雑誌自体を買わなくなって、ほとんどの知識はネット頼り。それなのに記事は旧態依然の切り口の繰り返し。もっと撮影時の体験談などを展開できないのか。想像だが執筆者が毎度毎度決まっているため、彼らに一任していることからマンネリ化を打破できないのではないか。
加えて写真も200ズームで撮ったものばかりで、写真が大きな「売り物」であるのに凡庸でしかない。多くの人の写真をたくさん掲載しようとしているのか、その一枚一枚も小さくて「質より量」的な扱いで際立ったものが少ないのはとても寂しく正直ウンザリする。だから買わない。
少なくとも立ち読みする読者が、衝動的に財布のひもを緩めるような記事や写真がないと売れるわけあるまい。
おかげで最近の雑誌は月刊のものよりも季刊であったりイレギュラーに発行されるものの方が断然面白い。たとえモノクロの、古くピントが甘い写真でも個性が滲み、一枚一枚を真剣に撮影していた様子が実感できる。本音を言えば自分が記事を書かせていただいた「電気機関車EX」やネコの「国鉄時代」などは発刊当時、価格も価格だから長くは続かないのではないかと危惧していたものの、最近は自分が活動していた時代の記事や写真がじわじわと増えて面白味が増してきた。要するにもう実物の列車撮影に「未来」などないのだから「過去」の方が断然楽しいということなのだろう。年齢的な感想でもあるが。
そんなことを考えると昨今、多く見かける超俯瞰撮影など風景をフレームに多く取り入れた写真が何十年かして鉄道雑誌に掲載されても、どの程度その時代の読者に響くか想像できない。特に風景主体のショットは何年もたって真似して撮ろうと思っても樹木が伸びたりするなど、環境変化のおかげでお手本となるような写真が撮れなくなる可能性は非常に高いから、せっかく苦労して撮っても写真としての「旬」は短い気もする。
やはり写真の価値がもっとも問われるのは主役であるはずの車両の「記録」にこそあるのではないか。
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2014年3月23日、家族でニセコにスキーに行った際、撮影した「トワイライトエクスプレス」。この列車の大阪行きは冬でも夕日が当たる時間帯に非電化区間で撮影が可能で、そういう意味ではほかの列車よりもいちはやく運行が終わったのは残念だった。
あと一年、廃止が延期になっていたら長万部以南でも手垢にまみれていない撮影地を開拓できたはず。












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