保存機C5694の惨状
少しは涼しくなることを期待して今月は帯広を訪れる予定。
帯広は3月にも行ったが、今回は久しぶりにエゾナキウサギを見ようと考えている。サケが川に遡上する時期に入るため道東に行けばヒグマの姿も濃くなるが、そちらはもう少し先にして9月はここ4年ほどご無沙汰のナキウサギを優先することにした。それにヒグマは動きも緩慢で表情も乏しく、全身真っ黒とあって絵的にも変化に富む写真をモノにするチャンスは少なく被写体としての面白味はさほど高くはない。実際にクマを見たことのない人に写真を見せれば「凄い!」とか「危なくはないのか?」などと驚かれるが現実はそんなもの。だからいつもはシマフクロウを待っていると(まだ撮れたことはない)、その合間に出てくるから撮ってはいるが、わざわざヒグマ撮影を目的にしたことはない。
実は帯広、近くに知名度の高い観光地があるわけでもなく、全国的にはせいぜい十勝川温泉ぐらいしか知られていないが、市内の緑が丘公園は市民の憩いの場所でリスが走り回り、キツネやフクロウ、モモンガなども見られて一発で気に入ってしまった。食事に関しては海から少し離れているため魚介類についてはまあまあながら、農産物や乳製品はどれも美味だし、いつもお世話になる十勝川温泉のホテル、豊洲亭のコース料理も絶品。モール温泉も湧き出て北海道各地に足を運んできた自分も最ものんびりできる道内随一の場所。楽しみだ。
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台風が低気圧に変わり今日の横浜は朝から青空。久しぶりにBMW M4を走らせて本屋に行き文庫化された小説を買ってきた。
その際、鉄道書籍にも目を通したが、やはり今回も買いたいと思うような本には出会わなかった。月刊誌については最新の情報を見ても気になる車両もなくなってしまっているから、もとより購買意欲など起こるべくもなく単行本コーナーで最近刊行されたものを何点か見たものの、どれも昔撮った写真を羅列しただけの内容で、ページをめくっても変化がなく飽きてしまう。立ち読みするだけでもウンザリするような本にこんな価格で付けて果たして売れるのだろうか?とこちらが心配になるほど。特にEF58の写真集など200ズームクラスのレンズで撮ったものばかりで全てのページに目を通す気になれなかった。もちろん中には良い絵もあるのだろうが玉石混交の様相で、せっかくの良い写真が埋没し目立たなくなってしまったのはもったいない。
人それぞれの価値観は異なって然るべきだと多様性を重んじる時代、どうでも良いことながら残念な思いがしたのはかつて自分自身がEF58を撮っていた頃、大窓機の撮影回数に拘って「質より量」に走りそうになったことを思い出したからだ。
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先月の旅行中、信濃大町市内の公園で見かけた保存蒸機C5694。見ての通り酷い有様。見つけたときは公園の端に置かれた鉄くずの山に見えたほど。かつて飯山線や長野機関区で現役時代のC56を見ている者としては、こんな扱いなら解体した方がマシだと思ったのは本心。
現役蒸気機関車末期、各自治体はこぞってSLを静態保存したが、50年近くたってメンテナンスを続けず荒れたままになっている保存機は多く、今やそのほとんどがこんな状況かもっと朽ち果てているのだろうと想像する。
地元自治体にも保存した当時の感激など覚えている人もいなくなって、今や補修ための予算もつかず持て余しているのが実情ではないか。クラウドファンディングなどという響きの良い言葉で寄付を募り、きれいな状態になった保存機もあるが、とどのつまり行政の責任逃れのような気がしてならない。
補修された保存機にしてもそのタイミングで屋根などを設けないなら数年たてば再び荒廃するのは明らか。そのときになってまたクラウドファンディングを募っても、もうその頃、自分が見たこともない蒸気機関車の補修に寄付してくれる奇特な人がいれば良いが、そんな方々は先細りになるだろう。ならばいっそここで解体してしまうのも英断なのかもしれない。将来に光明が見えない「延命策」ならば宮城県内各地の静態保存機のように、解体してしまった方がベターだと感じるのは自分だけか。現地を後にする際、C5694が「安楽死」を望んでいるような気がしてならなかった。
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