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2025年2月

2025年2月17日 (月)

3年前の北海道で

 「X」や「LINE」などのSNSに対する警戒感が根強い自分がインスタグラムを始めたのは昨年の3月。手を染めたくはなかったが、生き物の撮影をするようになって現場で知り合った人から住所や電話番号を聞かれるケースが増えたため、その矛先をかわすための連絡用として使ってみることにした。始めてみるとほかの方々がどこで何を撮影しているかが分かって、こちらも参考にさせていただけるのは大いに助かる。鉄道撮影とは違ってどこでどんな被写体に巡り会えるかは自ら情報収集するしかないのだから、ネイチャー系の写真を撮っている人にはかなり重要なツールだ。

しかしながら、たびたびメッセージをもらうと厄介な場合もあって、自分のような面倒くさがり屋としては鬱陶しく感じる場面も少なくはない。
先日、「次の撮影旅行はいつからどこに行かれるのですか?」と昨秋、知床半島の羅臼で知り合った人から問い合わせをいただいたため、ザッとこちらのスケジュールを教えたところ、「それなら私もご一緒したい」と言われ「まあ、イイか」と返事をしたところ、日にちを間違えて宿を予約してしまったらしく「残念です」との返信が来た。ひょっとしてこちらの手落ちだったら悪いと思って過去のメールを検証すると、やはり相手の勘違い。しかしいくらそうであってもやはりモヤモヤした気分は残るもので、20日の出発を前にしてなんとなく気が重い。そもそも「一度しか会ったことのない人とSNSでやり取りをしているからと言って、表現は悪いがノコノコついてこられてもなぁ…。」というのがホンネなのだから、迂闊に教えてしまった自分の判断ミスには違いないのだが。

会社勤めをしていた時こそ、人付き合いはうまくやってきたはずだが、もはやフリーの身となって(再び表現は悪いが)「金魚の糞」のように自分より年上のオッサンに押しかけられても疲弊するだけ。たとえ相手がうら若き女性であったとしても、他人に気を遣いながら時間を過ごすのはもはやしんどくなってしまった。

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遅まきながら書店で「鉄道ジャーナル」を手に取ってみると、表紙の裏に「休刊」のお知らせを見つけた。かなり以前から知っていたことだし、一度記事にしたから、そのこと自体はとっくに受けいれているが、「休刊」という言葉に編集してきた方々の「未練」を感じてしまう。
これまで長らくさまざまな趣味誌を購読してきて、いくつかの雑誌が消えていったが、いずれも「休刊」という言葉で、それらが復活したためしはなく、ここはジタバタせずに「廃刊」とした方が潔いとは思うものの、そこには作り手側の愛着が存在してきたわけで「廃刊」はあまりにも刺激的すぎるのだろう。そう思うと広い意味で同じマスコミに身を置いてきた身としては身につまされる思いもある。

立ち読みしながら、ここは「鉄道ファン」誌など、由緒ある別の雑誌が「鉄道ジャーナル」の休刊に合わせて、ささやかなスペースでも良いから、なんらかのエールを送るような気遣いを見せてくれないかと感じるのだが。

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写真は3年前の2月に石北線の呼人付近で撮影した183系時代の「大雪」。モモンガを撮りに行ったときのものだが、このころはまだ時間を割いて列車にカメラを向ける気力もあった。
普段は夜行性で日中、姿を見せないモモンガも繁殖期に向け早朝や夕方、撮影できるチャンスが増えるが、それ以外の時間はよほど運がよくないと無理。そんなときの「暇つぶし」として列車を撮ることもあった。

あれから3年。先日の旅では久しぶりにC11の「SL冬の湿原号」を撮ったが、SLでもなければ線路際に立つこともなかっただろう。
ことしも春のダイヤ改正で北海道でも消滅する列車や車両があるのかもしれないが、何がなくなるのかも知らないし、知ったとしてもきっとそれらに時間を割くことはないだろう。

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この写真、3台のパソコンで眺めると機器によって色の濃淡がまちまち。もっぱらEIZOのモニターで色合わせをしているが、記事を書いたパソコン画面では色が浅すぎるように感じてしまう。

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2025年2月12日 (水)

「SL冬の湿原号」③

20日からまた道東方面へ。今回は10日間の長丁場で、衣類やスノーシューなどは宅配便で送り、いつもより機材を多めに持参しようと考えている。このところFマウントのニッコールの出番がなくなっているため久しぶりに使ってみたいから。Zマウントの方がAF速度が速いとはいうが、200ズームと400ミリ以外ならFマウントでも全くと言って遜色はなく退役させるにはあまりにももったいない。生き物を撮影する場合、AFの速度そのものが取り立てて問題になることはなく、そんな些末なことを嘆くよりも被写体を早く見つけることの方がはるかに重要。レンズが古いからAFの合焦速度が劣るとぼやく人も多いが、そんな感想を聞くと腹の底では「分かってないな、このバカ!」と感じてしまう。
まだまだ新品に近い500ミリのF4やF5・6などは切れ味に関しても抜群で、ワシやモモンガなどの撮影には威力を発揮するはずだ。

ところで今述べたように、鉄道撮影と違って動物や鳥を撮るには撮影者が居所を早く見つけなければならない。動物や鳥を扱う雑誌は少ないし、撮影地を記すと現場に人が多く集まって生き物が寄りつかなくなるため、どこへ行けば何が撮れると書かれたものはなく、現地で会った人に尋ねたり(なかなか教えてくれないのは当たり前。それでもそこを聞き出すのが会話のテクニック)、さまざまな資料を漁って撮影できそうな場所を独自に見つけなければならず、今回の旅でも春の撮影に向け、そんな所を開拓しておくことも重要な目的の一つになる。

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1月の道東旅行は動物や鳥をほとんど撮影できなかったため、柄にもなく復活蒸機が牽く「SL冬の湿原号」を撮って無聊を慰めた。とは言っても標茶から釧路に戻る下り列車はC11が逆向きで牽引に当たるため撮っても仕方がないから釧路からの上り列車のみしか撮る意味はなく、大した暇つぶしにはならなかったが、釧路発の時刻が11時すぎのため、朝風呂に浸かってからも悠々間に合うのは楽でイイ。まだ蒸気機関車が現役だった頃、一日に何本かのSL牽引列車が走っていてガツガツするまでもなかった時代を思い出す。

釧路湿原の一部を見渡せる有名な撮影地も、すでに撮る人は撮ってしまったのか、空いていてのんびりしたもの。列車を待つ間も眼下にキタキツネやエゾシカ、タンチョウが出没し、どちらかというとSLよりもそちらに気を取られていたが、釧路湿原駅を発車する汽笛が耳に届くに及んで一脚に付けたカメラのシャッター速度や絞り、フレーミングを線路に合わせてスタンバイ。400ミリでここまで引きつけた後は別のカメラに持ち替えて110ミリ程度で絵はがき写真を撮った。欲張って2台で撮っても短いレンズで仕留めたものなどRAW現像する気もないのに、そこは元鉄道ファンの性。列車が接近すれば煙の出具合がもっとマシになるかもしれないと淡い期待も抱いてしまう。

それにしても400ミリのF2・8、以前はもっと重たかったように思うが、最近はずいぶんと軽量化されたうえ解像力も格段に向上し、さらにはテレコン内蔵なのだから非常に重宝する。

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2025年2月 3日 (月)

「SL冬の湿原号」②

「鉄道ジャーナル」が2025年6月号(4月21日発売)をもって休刊となる。この話が今はもう鉄道趣味から遠ざかっている自分の耳に入ったのは昨年の暮れのこと。ジャーナル誌は鉄道車両そのものよりも路線や歴史などに関する記事が多く、竹島紀元編集長が退役後は全くと言っても良いくらい買ったことはなかったものだから、あまり目を通していなかったが、休刊が正式に発表されてみるとやはり寂しい。
筆者が最初に「鉄道ジャーナル」を買ったのは、たしか1970年のことだったように記憶しているが当時はまだSLブーム。月例の写真コンテストには稚内の窪裕文氏や名手・原京一氏らが毎月なにがしかの賞を取っていて、それらの写真にずいぶん刺激を受けたもので、その後の「列車追跡シリーズ」などからも様々な知識を得たのが忘れられない。SLが全廃後はほとんど購読することはなくなっていたが、それらの記事が収録されているものは今でも大切に書棚に並んでいる。

あの時代の趣味誌はジャーナルや「鉄道ファン」「鉄道ピクトリアル」で、ほかにはキネマ旬報社から「蒸気機関車」が出ており、自分と同じ世代のファンはそれらの雑誌から大なり小なり影響を受けているはず。だから今般、その一角が消えることは非常に残念。今年の7月以降は書店の鉄道雑誌が並ぶコーナーに行ってもジャーナル誌が平積みされている、これまで当たり前だった光景は見られなくなると思うと、手元に残った数十冊のジャーナル誌がいよいよ愛おしくなりそうだ。

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動物を撮影するようになってまだ夜明け前の撮影地に車で到着したときにいつも忌々しいのは、エンジンを切らなければドライバーの意思でライトを消せないこと。ヘッドライトについては消灯できるがスモールランプは消せず、夜明け前から活動し始めている動物を驚かせたり、場所によっては近くの民家の方に迷惑をかけてしまう場合もあっていつも気が引けてる。もちろんそばに家がある場合はエンジンを切るのはマナーだが、民家がなく真冬の氷点下にもなる山中ならヒーターを切りたくないからエンジンをアイドリング状態のままにしておきたいことだってある。
また、自分の住んでいる横浜市内でも路上に一時車を止める際、ヘッドライトを減光あるいは消さないまま駐停車している車も多くまぶしく、対向車に対する配慮に欠けたドライバーも増えて非常に不快。

おまけに暗い夜道では対向車が来なければライトが勝手にハイビームになったりしてドライバーの意向は反映されず、北海道の夜道を運転していたときに何度か危ない目に遭ったもので、こういった過剰な装備を付けるならそれを解除できる機構も組み込んでほしいものだ。何もかも車がやってくれるというのは初心者やサンデードライバーには良いだろうが、それが仇になるようなケースもあることをメーカーの人はもっと知るべき。新型車を送り出す側は気の利いたような装備を開発したような気分になっているのかもしれないが本来、人間自身が配慮しなければいけないような行為まで自動化するのはバカな人間が増えることを助長するだけだ。

今やアイドリングストップなどというものは、いたずらにバッテリーを傷めるだけで不要との意見が多いことなど、その一例ではないか。

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自分でもまさかこんな有名撮影地に行くとは思ってもいなかったが、なんだかこの「SL冬の湿原号」のお先は真っ暗のようで、いつ運転が中止されるかわからないため、重い腰を上げてポピュラーな撮影地に立つことにした。なにしろ災害で線路が流されたりすればすぐに廃線にしてしまう今のJR北海道。もしC11に大きな故障でもあれば直ちに運転取りやめなんていう事態だって想像できるのだから、自分の目の黒いうちに有名撮影地でごくごく当たり前の写真を一枚ぐらい残しておいても良いだろうと判断した。いまのところ雪を見たさにやってくるインバウンドの旅行者が貸し切り列車を仕立てることもあって乗車率自体は高そうなので、のんきにしていても良さそうだが何が起きるかわからない。せっかくこの季節、釧路湿原に出向いたリタイア鉄チャンとしてはしゃかりきにならないまでも気にかけるのは不思議じゃあるまい。

また、この前日と前々日は大雪ながら水分の多い雪で気温はそれほど下がらず、温かいSLを遠く離れて俯瞰撮影などすると靄がかかってしまいそうだから天気や風の強さを見て滞在中、この日が俯瞰には最もマシだろうという判断も働いた。そしてさらに昨年買った400ミリ F2・8をまだ鉄道撮影に使用したことがなく、その性能を確認するために遠目からの撮影を一度体験しておきたいといった思惑も加わった。

現地に着いたのは列車通過の1時間半ほど前。目の色を変えた鉄チャンどもがわんさか先着しているかと思ったらまだ三脚は3本ほどしか立っておらず予想は外れたが、釧路川鉄橋で撮影してから先回りしてきた連中が到着すると、列車通過時は丘の上と下、踏切周辺で25人ほどになった。

この程度の高さからの撮影を「俯瞰撮影」というのはおこがましいが、これよりも列車が小さく写るような俯瞰撮影は願い下げ。蒸気機関車を撮りに行っているのに煙さえ見えれば良しとしてしまうような絵は真っ平。

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